昔は旅の価値がよく分からなかった

今は旅行が好きだけど、昔は特に興味がなくて価値も分からなかった。もちろん、旅行に出る機会もほとんど無かった。今でも旅行を人に勧めたりはしないけれど、なぜ嫌いな状態から好きになったのかという話は、今旅行に興味がない人に多少違った視点を与えられるかもしれない。

なぜ好きではなかったのか

自分が旅行が好きではなかった理由は単純で、「時間とお金がもったいないから」だった。

旅行に行くということは、日帰りであっても泊まりであってもある程度の時間とお金を使うことになる。そこで、旅行で得られるものが費やしたお金と時間よりも大きければ旅行に行きたいということになるが、そうは思っていなかった。

例えば丸々3日旅行に使うとなったとき、その旅行が楽しさや得られる経験が、同じ期間に自分で勉強したり他に使ったほうが有意義な時間を得られると思ったら、行く価値がないという判断になる。また、費用で見ても旅行に行く数万円を他のことに使ったほうが有意義だと思えば、同様にお金をかけるべきではないという判断になる。

ある程度は時間とお金は可換なので、原因は1つといっても良いかもしれない。ちなみに当時は家賃28,000円の家でそれに月6,7万円ほどのバイト代で暮らしていたので、月の生活費は10万円弱くらいだった。1万円がどれほどの大金だったかを考えれば、その考えに至るのも不自然ではないはずだ。

これが好きではなかった理由だ。

小さい頃から両親に旅行に連れて行ってもらっていてそれは楽しかったのだが、旅行が楽しみで仕方ないという感じではなかった。大学1年生の時に1ヶ月間アメリカでホームステイをした経験があって、普通だと旅行が好きになりそうなものだが、そうはならなかった。アメリカに行ったときに感じたのは、日本とあんまり変わらないな。というものだったからだ。

なお、自分の周辺を見た限り、女性は旅行好きな人が多いけれど、男性は旅行好きな人が少ない気がする。特に海外で見かける日本人は女性の方が圧倒的に多い。この理由は未だによく分かっていない。

バイクを買った

バイクが好きな幼馴染が、事あることにバイクを買えって言ってた。20代前半の若い頃だ。しかし、バイクなんて全く興味がなかったので、そんな無駄なものを…とずっと思っていた。

だったのだが、1個目の会社を辞めて2個目の会社に移ろうってなった時に数ヶ月の時間が出来たので、じゃあ免許くらいは取るよ、と言って教習所に通ってみることにした。

何でもやってみるもので、教習所で乗ってみたら意外にも乗ること自体が結構楽しかった。その流れで、免許を取ったらすぐに2個目の会社に移るまでの生活費を全て使ってバイクを買ってた。なお、その後の数ヶ月の生活費は次の会社の社長から給料を前借りした。まだ働いてもいないのに給料を前借りするとか、今から考えるとやばすぎるが。

時間があったので、東京近郊でバイクを乗り始める生活が始まった。

行動範囲が広がる

バイクにも慣れてくると、やがて東京近郊で1泊で旅行をしてみるようになった。富士山まで行って泊まって帰ってくるとか、そんな感じ。たまに連休があったら、少し足を伸ばして2泊の旅行をすることも出てきた。

そのうち、何泊でもやることは同じじゃんということに気づいた。荷台はなく、荷物は全てバックパックに入れて背負っていたのだが、ホテルで洗濯すれば着替えの心配しなくていいことを学んだからだ。いつも3,4日分の着替えを持って出かけていた。

本州、四国、九州、北海道をぐるぐるして、そのうち行ったことがない都道府県が少ないことに気づいた。途中から、行ったことない場所に極力行くようにして、最終的には沖縄以外全ての都道府県をバイクで訪れた。沖縄は何回か飛行機で行ったことあるけれど、バイクを運ぶには船で3日くらいかかるので、そこまでしなくていいかなと思って未だにしてない。ただ、この事を友達に話すと、あと1個達成すれば全部って言えるならそのためだけにやるけどなぁ、等と言われる。それを目的にしてやってたらそうだったかもしれないが、気づいたらほとんど行ってたという感じなのでそうは考えない。

海外も国内も同じように行けるのでは

バックパックで国内で何泊でも出来ることが分かってから、これ海外旅行も同じことなのでは?と思った。

ただ、会社員だった当時は全然お金がなくて、海外旅行とか全く考えも及ばなかった。国内旅行だってお金かかるでしょ?と言われるかもしれないが、いつも1泊3000円くらいのビジネスホテルに泊まっていて、当時は土日の高速1000円だったし、下道で広島まで行く程度の体力があったので、かなり安く旅行できていた。

余談だが、当時ホンダの400ccの中古バイク(6500km走行くらい)を38万円で買って、2年で3万kmくらい乗って中古で売ったら28万円で売れた。ハードウェア代としては1kmあたり3,4円くらいだったということになる。その後に大型免許を取って Ducati のバイクを友だち価格で30万円で譲ってもらった。それも3万km以上乗ったが、こっちはほぼ値段がつかなかったみたい。車については知らないけれど、旅行の足としてのバイクは結構安上がりかも?

話を戻して、2つ目の会社を2年弱で辞めてフリーランスになった。社会人になってから貯金額が50万円を越したことが一瞬しかなかったが、1年くらい働いたら多少お金が貯まった。普通フリーランスになるときは生活防衛資金を確保しておかなければならないが、当時の貯金は10万円くらいというヤバい社会人だった。今から思えば、もし貯金が100万円くらいあったら、フリーランスになろうと思ってなかったかもしれない。

フリーランスになりたての頃もバイクで日本全国をぶらぶらしていたのだが、多少お金が貯まったので思い切ってヨーロッパへ行ってみることにした。

ヨーロッパへ行ってみる

Skyscanner で調べまくったところ、プラハまでの往復チケットが68,000円くらいで買える期間があったので、これだ!と思って購入した。68,000円自体は高かったが、成田上海間がJALで往復31,000円くらいと知っていたので、それに比べたらヨーロッパまでその値段なら安いかも?と思ったのだ。

元々、高い飛行機のチケットを買うのだから、ある程度滞在しないともったいない。という気持ちがあって、旅行期間を3-4週間くらいと想定していて、実際には3週間ちょっとくらいの旅行とした。

この旅行で考え方がかなり変わったと思う。

プラハへ行く

スーツケースは持たず、バックパックに全て詰めて行った。プラハに下り立ったのが夜だったのだが、安いと思って予約したのがホステルだった。

ホステルって当時知らなかった。知らない人に説明すると、ドミトリー形式の6-10人程度の相部屋なのだが、行ったところがそれだった。あー失敗したなーと思ったが、到着が夜遅かったので仕方ないと思って1泊した。

その時の心境は、全く知らない人と相部屋なんて落ち着かないし嫌だなぁというものだった。

これは本当に運が良かったのだけど、その部屋にいた人がとてもフレンドリーで、色々話しかけてくれたのだ。実際ホステルって基本的にそういうところなのだけど、当時何も知らなかったのでとても新鮮だった。英語レベルが低すぎたので、表面的な会話しか出来なかったが、恐らく人生で初めて頑張って英語でコミュニケーションを取ろうとした経験だったので興奮した。

プラハに着いた時、物価について何の知識も無かった。漠然と、東南アジアは日本より安い、ヨーロッパは日本より高い、などと思ってた。実際はどうかというと、チェコの物価ってかなり安いのだ。地理的なメリットがあるので現在は物価がどんどん上がっているが、それでも相対的には安いと思う。大体日本で言う中ジョッキ(向こうでは小さいが)のビールが100円とかで、ディナーも1000円くらいで割と満足いく質と量が得られる。はじめ、通貨計算をしていなかったのだけど、計算してみたら予想より遥かに安くて何度も計算して、計算機がバグってるのかな?と何度も思ったくらい。

そんなわけで、ヨーロッパの物価>日本の物価というイメージは誤りという小学生でも知ってそうな知識を学んだ。そもそも「ヨーロッパ」ってまとめすぎで、ヨーロッパにはたくさん国があってそれぞれ全然違う。当時はそんなことすら知らなかったのだ。その時、こんな単純なことですら興味の外側にあることは、知ろうとすらしていなかったんだなと思った。興味を広げるのは難しい。ここに来なかったら一生知ることは無かったかもしれないが、来たことで一瞬で知る事ができた。面白いなぁなどと思った。

ちなみに、プラハに行ってプラハを好きにならなかった人はいない、などと言われたりするくらいなので、ヨーロッパで失敗しない行き先を問われたらプラハと言うようにしてる。

行く前に友達から、ヨーロッパに行くならクラシック音楽について触れてみたら?って言われてたので、プラハでも演奏を聴いたりしてみた。教会やお城のなかで演奏していたりするのだが、安いし何も知らなくても楽しめる物が多かった。

ウィーンへ行く

その後、電車でウィーンへ向かうのだが、そこでも発見があった。長距離列車の切符を買うという単純なことでも、どこでどうやって買うのか?とか調べるのが割と楽しいことに気づいた。日本だと簡単に行えていたことが難しいとなる体験は、面白いなと思った。

ウィーンはその後にも何度か行く縁のある土地になるのだが、当時の旅で一番響いたのはモーツアルトの家だ。これも友達に薦められて行ったのだが、やたらと興味を惹かれてしまった。

その後オペラ座へ行ったりクラシックの演奏を何度か聴いたりする。

ボンへ行く

ちょうどボンに留学していた大学の後輩を訪ねてドイツのボンへ行った。ベートーヴェンの故郷としても有名な場所だ。

ベートーヴェンの家にも行くのだが、そこに滞在した数時間の間に自分の音楽の好みが一気に書き換えられてしまった感じがした。どちらかというと退屈だと思っていたクラシック音楽が、最も興奮するジャンルの音楽へと変化したのだ。ちなみに日本の音楽では Sound Horizon が唯一ずっと大好きで聞き続けている。この旅行中ずーっと聴き続けていたので、未だにサンホラ聞くとドイツが思い浮かぶ。

とにかく、一瞬で自分の音楽の好みが変わってしまうという体験をしたので衝撃的であった。

オックスフォードへ行く

また別の友達がオックスフォードへ留学中だったので訪ねた。オックスフォード大学はハリーポッターのロケで結構使われているらしいが、ハリーポッター見たことなかったので分からず残念だ。

その時、彼の友達の人たちと英語で会話したが、全くコミュニケーションが取れなくてお前の英語poorすぎでしょ、って言われた😅 それから5年以上経って、そのときに会った人たちに再会する機会があったのだけど、今度はコミュニケーション取ることが出来た。英語は何となくでも、使っていればそのうち慣れるようだ。

ちなみにイギリスのご飯が不味いというのは、美味しいレストランが少なめというだけで、全て不味いわけではなかった。選ばずお店に入ると大体不味いというだけの話だ。

初めてのヨーロッパの旅が終わる

この旅行では色々なことを学べて、海外旅行が楽しいって言ってる人の気持ちが初めて理解できた。この旅行中は多分半分くらいは1泊1000円前後のホステルに泊まっていたのだけど、思ってたより全然お金かからなかったなという印象だった。

この旅行では、まだ綺麗な景色や有名な場所を訪れることを重視していた。それはその後変わっていくのだが、当時はそれでも色々見聞を広めることが出来た気がする。

人とコミュニケーションする機会は、予想していたよりはあったが少なかったので、英語力を高めたい、みたいな願望は出てこなかった。

旅行に対する価値観はその後大きく変わっていくのだが、とりあえずこの時点で人並みに旅行が好きというレベルには達していたはずだ。

これが、旅行が好きではなかった状態から好きという状態に至るまでの経緯。人に旅行を勧める気は全く無いけれど、もし昔の僕みたいな考えの人が何か試してみるきっかけになればと思って書いてみた。

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